・ガルムの目的
そういや、Twitterではこいつのことについて色々言っていたけれど、こちらや日記ではこいつについて詳しく言ったことなかったかな?
結局、こいつの目的はなんだったのかというと。
これはまあ、作中でも言っていた通り『惰性で生きてる』。これです。
何言ってるの?って感じですが、本人もわりと自分含め周りや世界のこととかどうでもよくなってる人間なので。
本人自身も言ってますが、これは彼の魂そのものが完全に壊れているためです。
かつては明確な目的がありました。
『アカシックレコードの力を手に干渉者を超える存在になる』『兄や父、神を超える存在になる』『この世の全ての力を再現する』
まあ、要は世界で最高の存在になりたいだとか、自分では出来ないこと全部をやりたいとかそんな感じですね。このへんは彼が凡人で、かつヴァイスやクレイムディアのような上の存在を知ってしまったので、それを超えたいと思った平凡な願いですね。
で、この場合なにが最悪かというと。彼にはそれが可能だったという点です。
ただし、それが『出来るまでの年月があまりに長すぎた』。
わかりやすい例ですと、5億年ボタンです。
ガルムはアカシックレコードの知識で限りなく不老不死になる方法も得ました。
マクスウェルという自分が至高の存在になるための組織も作りました。
最初のうちはそれはそれは熱心に頑張っていたでしょう。が、次第に魂が摩耗します。それこそ同じことの繰り返し、その進展も他者から見れば1ミリ程度しか進まないようなことを何年何十年とやります。
普通だったら折れます。というか折れるのが正解。
ただガルムはそれをずーーーーーっと続けてしまったんですよねぇ。これも正直、彼の魂が摩耗していたというのもあります。
彼自身も言っていましたが「下手にゴールが見えてしまったので、あとは全部惰性でやってしまった」。
私自身も、たまにこのようなことがあります。
わかり易い例であげると彼は延々と終わらないゲーム、それそこエンドコンテンツのオープンワールドをずっとプレイしてる状態。一昔前のMMORPGとかでもいいです、めちゃくちゃやることがありまくってそれこそ一生終わらないほどのエンドコンテンツがあるゲーム。
それをずっとログアウトすることも出来ず、他にやることもないので延々とそれをやり続けている廃人。
もう面白さもクソもない。なのにずっとやり続けている。なぜか?惰性。
これがガルムです。
なので、彼の『惰性』という言葉の真意もこういうことです。それこそもう終りが見えているMMOや、これ以上更新もなく運営もそのゲームから撤退してる。けれど、エンドコンテンツの7~8割をやってる状態。あと2~3割でこのゲームの全てをコンプできる(もっともそれが出来るのもまだまだはるか先の状態)
そんな状態をずっとやっている廃人プレイヤー。
完全に人間として彼は壊れてます。これがガルムの本性であり、彼という人間の正体。
じゃあ、終われば?と言われればそうなのですが、それも出来ないほど思考停止の状態になっているのです。
仮に彼が全てのエンドコンテンツをクリアして、世界最高の干渉者になっても「ああ、こんなもんか」で終わりでしょう。
目的を果たしても、もうそこに感じ入るものは一切ありません。
彼自身が言っていましたが「無価値」。それが彼の本質であり、彼自身も目的すらもその「無価値」になったのです。
これも以前Twitterかなにかで言いましたが、彼自身いつでも死んでいいと思っています。しかし、だからといって自分から死ぬ勇気もなければそれを実行する意思もありません。あるのは"惰性として生きること”。これまでやっていたのことの"繰り返し”をするだけ。
ただある意味で、これって一番人間らしい結末なんですよね。
惰性で、それまでやっていたことを延々と続ける。
究極の保守的思想であり、多分多くの人が割りと過去に何度かやっていることじゃないでしょうか。
春剣中の彼の陰謀や策謀、立ち回りなどは、実はそうした過去の自分の行動の繰り返しをしていただけなんですよね。そこに特別な感情も一切ありません。
だから一見すると悪行を楽しんでるようでも心の中は空っぽ。
「ああ、そういえば昔はこんなのでも心の底から楽しんでたなー」みたいな感じ。
ある意味で、悟りの境地みたいなものに到達してるとも言えますね。まあ、人としての魂が完全に壊れているので彼が理に至ることはありませんが。
なので、ガルムを倒すには彼になんらかの「価値」を見出したらダメなのです。
たとえば、作中で多くのキャラがガルムを脅威、不快、排除したいと言った感情を持ちました。
こうした感情を彼に抱く=彼に価値を見出す なので、その時点でダメなのです。
たとえば、不敗の覇王フォルクス。
彼はガルムが危険な因子であると分かって、自分の配下に入れました。
が、すぐには殺さなかったのはいくら不穏分子でもまだことを起こしていない者を処断するのは信義にもとる。
これはフォルクスのモデルでもある項羽の「鴻門の会」のエピソードから来ている部分です。
ようは明らかに疑わしい人物であったとしても、まだ反旗を翻していないのに「お前は怪しいから」で殺すのは武人のやることではない。
なので、フォルクスはガルムが事を起こし、自分に反旗を翻した際にそれを理由に討つ気だったのです。どこまでも武人体質な人ですが、これがいけなかった。
つまりガルムを「一人の人間」としてちゃんと見てたのです。
ヴァイスにしても、ガルムがクズなのは理解していましたが彼の持つ知識や力は役に立ちます。それを利用して、その後で処分するつもりでした。
ここでもガルムのことを「利用できる」と見て、彼に価値を見出していたのです。
他にグレッグやルーシー、クラウゼル、ぶっちゃけプレイヤーなども彼に「脅威」や「不快」「不安」「こいつなにかするんじゃないか?」と感じたこともありますが、それを感じた時点で、彼に「価値」を見ているので、そうなるとガルムの術中にハマるのです。
彼からしてみれば自分に対して「敬意」にしろ「利用価値」にしろ「脅威」や「不快」、「敵意」を感じれば、それを利用して逆手に取る方法はいくらでもあるのです。だって相手は自分に「価値」を見出したのですから、それを利用すれば生き残る方法はいくらでも見つかります。実際彼はそうやって長い年月生きてきて、そうした事態も飽きるほど経験してきたのです。
彼からしてみれば、どんな脅威や窮地も過去にプレイしてきたエンドレスコンテンツの延長線に過ぎません。しかも魂は壊れてるくせにプレイスキル自体は何千年とやってきてるせいで神がかってる。ほんまタチ悪いでこいつ。
なので、こいつを倒すためにいちばん重要なのは「こいつに価値を見出さない」=「無価値」と思って完全に切り捨てる。
これは作中だとフレイがそれを行っていました。
ようは「いや?お前が何言っても俺は殺すけど?」と完全に割り切って殺す。そこに殺意や復讐と言った余計な感情も一切入れない。ようは机の上にゴミがあるから、それをゴミ箱に捨てるくらいのドライさ。そこに一切の価値はない。
これはフレイも言っていましたが彼の復讐の炎はあくまでも自分自身に向けられています。なので、ガルムを殺すのはそのおまけみたいなもの。別に特別な感情もない。
だから、実は作中でフレイだけがガルムの本質である「無価値」を見抜いていたのです。
こいつにはなにかの価値(感情)を持って殺そうとしたら、その時点で負け。
なので、あのシーンのガルムは「ああ、こいつちゃんと分かってるな」とフレイが自分の本質を見抜いていたのに気づいたので「詰んだ」みたいな事を言って、大人しく諦めていたのです。
ああ、ちなみにこういう不老不死キャラにありがちな「やっと終われた……」みたいな自分の死に感謝する感情ありますが、こいつにはそれすらありません。
自分が終われるという事象に対しても「ふーん」と無関心。なぜなら魂が壊れているから。どこまでも無価値で壊れた男。それがガルム。あらためて書くとやっぱこいつ壊人だな。
あの最後の笑いも空虚な笑いで、「無価値」と嘲笑っていたのは自分と自分が見える世界がやっぱり最後まで無価値だったから。
なので、ルティ編をやっているとティオン編でガルムがあっさりと死んだ印象がありますが、むしろ自分の中ではガルムはああやってあっさり死ぬのが相応しいと思っております。
ん?グラド?知らない子ですね。